SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)に見るメンタルヘルス

◎SNSの投稿の変化が気になって…

 フェイスブックなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は、スマートフォンの普及により、誰もが簡単に繋がるようになって、利用している人は大勢います。かくいう私も出身校の同窓会のソーシャルネットワークに入っていて、同級生たちの活躍を楽しみに見ています。

 ところが、最近、ある同級生(男性)の投稿が変化しました。それまでは、飲み会や会食の1シーンや、職業柄、訪問した設備やイベントなどの投稿がメインだったのが、数か月前から、それらの投稿がなくなった代わりに、夕陽や海辺などの風景や、出かけ先などでふと見かけた花などの自然を写したものになりました。それはそれで、見ていて楽しめる綺麗な写真なのですが、ふと気になって、連絡をしてみました。

◎約1年ぶりに会った同級生は、本来の顔に戻っていた

 すると、すぐに、食事でもと誘いの返信が来ました。話したいことがあるとのことでした。私はすぐに、きっと転職を考えているのだろうと察しがつきましたが、会ってみることにしました。

 約1年振りに会ったその人は、まず顔つきが変わっていました。以前、仕事人であった彼は、本当に同い年かなと心の中で思うほどに、何かに縛られたような厳しい顔つきをしていましたが、いま私の目の前にいるその人は、私が学生時代に知っていたその人本来の顔でした。

◎迷いの段階を通り越した「すっきりした顔」

 私は、その人の顔の変化に気づいた段階で、話の内容を聞くまでもなく、ただ、話を聞き、後押ししてあげればいいと判ったので、実は内心ほっといたしました。心理カウンセラーという立場上、問題を抱えた顔、迷っている顔、問題に押しつぶされそうな顔など、その人の表情による信号は、ある程度は判明できるものです。彼はすでにその段階を通り越した、いわゆる「すっきりした顔」をしていました。カウンセリングがいい状態で行われた後の顔です。内心ほっとしたのはそのためでした。

 実際の話は、長年勤めた誰もが知っている会社を退職して、趣味だったダイビングのショップをオープンさせるという、夢のような話で、本来ならば、止めることも友情であると思ってしまうような話でした。

 しかし、私はかれの夢に水を差すようなことは一切言いませんでした。なぜならば、彼はすでに、する・しないの迷っている段階にはおらず、夢の実現のための準備期間にいると思われたからです。実際、既に会社には辞表を提出しており、退社までの残務整理の段階にあるようでした。私は彼に、それを決めたのは、彼のソーシャルネットワークの投稿に変化のあった、数か月前だろうと尋ねたところ、なぜ判ったのかと、まるで私を霊能者か何かのように眺めていました。

◎ちょっとした変化への「気づき」

 心理カウンセラーは、霊能者ではありません!彼の投稿の変化は、誰でも気づくはずです。職業上の投稿を止めたこと、会食や飲み会の場が減ったことは、その人の社会的状況の変化を物語っています。自然の投稿が増えたことは、こころが癒しを求めているからでしょう。私がそれを説明したら、本人は、意図してやったことではなかったと、私から指摘されて初めて気づいたようでした。

 ソーシャルネットワークのような仮想のコミュニケーションの中でさえ、人はこころの声を発信しているのです。たいていの場合、本人も自分のこころの声に気づいていません。周りを見渡すと、ほとんどの人が、重いストレスを抱えたまま生活しています。それは、現代で生きるためには、仕方のないことですが、私は今回のような、知人・友人たちの、ちょっとした変化に気づいたときは、声をかけるようにしています。たいていの場合、私のひとことが引き金になって、実は・・・と話してくれます。そんな私をみて、「ケアストレスカウンセラー」の勉強を始める人もいます。

 アカデミーオブメンタルヘルス著「ケアストレスカウンセラー公式テキスト」が、日本能率協会からが発刊されて以来、財団法人職業技能振興会が認定する心理カウンセラーの資格である「ケアストレスカウンセラー」認定試験の受験者が回を追うごとに、増加してきています。

◎「気づき」から次の行動段階へ

 こころの健康が社会問題になってからずっと、「気づき」がキーワードのように言われ続けています。こころの健康状態に本人が「気づく」こと、周りが「気づいてあげる」ことが肝心であるというのですが、これは核心をついているようで、非常に曖昧です。具体的に何をどうしたら「気づく」のか、何に「気づく」といいのか、仮に「気づいた」らどうするのかが、さっぱり判りません。「ケアストレスカウンセラー」の勉強は、それが判るようになると自負しています。なによりも、受験者が増加していることは、社会が「気づく」ことから、次の段階を要求している証しだと思っています。

 それは決して難しい知識ではなく、日常生活の中で、たとえソーシャルネットワークのようなものの中でさえも、簡単に実践できるものなのです。

上級ケアストレスカウンセラー
久保敦司