OLD CHILDREN ~ 大人になれない老人たち~





2017年も穏やかな日の出と共に明けた。
やはりお正月はのんびりと昨年を振り返る時間がある。

穏やかなお正月もよいが、昔のような活気がない。フーテンの寅さんの映画のような、忙しく正月の支度をして、お雑煮を食べた後はみんなで双六をしたり、家の前で羽根つきをしたり、ワァ~ワァ~キャーキャーとしたあのハシャギ声も、みんなが集まるお正月のあの懐かしいシーンも、もう見ることがなくなってしまった。高齢化社会だから、仕方ないのかも知れない。

≪自分の事しか考えられない大人≫

 その代わりと言っては何だが、近頃大人になれない高齢者の事が話題になる。
 そもそも、大人の定義を引くと考え方や態度が十分に成熟していること。思慮分別がある事とある。例外もあるが一般的には子供と老人の共通点は他人の事を考えられない点だ。でも、最近はず~っと自分の事しか考えずに、高齢者になってしまった方が増えたのかもしれない。

≪申し訳ない気持ち≫

 その最たるものが、保育園建設に反対する人々だ。
 確かに子供はうるさい。反対に言えば、子供が静かな時は、体の具合でも悪いのではないかと思うのが普通だ。時々、若い人たちに申し訳ない気持ちを持つのだが、よく考えれば、自分達や大げさだが日本の未来は子供たちが担っていく。膨大な医療費や年金など多くの負担を子供たちが背負っていくのだ。その子供たちを大事にせず、自分の将来などあるはずがない。少なくても、私達が若い頃にはこんな沢山の負債を押し付けられなかったことを、思い出してほしい。
 ここで一つ認識をしなければならないのだが、保育園建設に反対する人々はほんの一部の人だということ。90パーセントの人々は仕方がないと理解を示しても、10パーセントの人が反対という声を上げてしまえば、反対者の声が大きいのでまるで大多数のように見えてしまうのが、民主主義の恐ろしさだろう。
 高齢者が自分のことだけ考えて声高に権利を主張する、ほんとうに、それで良いのだろうか?

≪ちょっと我慢≫

 だから、私は同じ高齢者として「ちょっと我慢」を提唱したい。

 自分の終の棲家を穏やかに、静かに過ごしたい気持ちはよく解る。しかし、都市は沢山の人々が集まって生活する場所だから、本当に静かに暮らしたければ都会を捨て、利便性を無視して、どこかの寒村に移住するしかない。そして朽ち果てるように、死を迎える。
 そこまでの覚悟の無い人は、「ちょっと我慢」をすれば、みんなが住みやすくなる。
 これからは、日本中空き家だらけになるからウィークデーだけプチ移住を試みてもよいと思う。そのうち、耳も遠くなるから煩いのも感じなくなるだろう。

 昔から、多くの日本人は子孫のためにという思想で、苦しく厳しい現実を耐えてきた。
自分たちの食扶持を摘めても教育に力を入れ、貧しさと戦ってきた。その先達の残してくれた遺産が、現代の繁栄だ。
 だから、みんなでちょっと我慢をしましょうよ!!
 若い人が、働きやすく、生き生きと暮らせる世の中を、今まで私達が謳歌してきたような明るい未来の描ける社会を残せたら、日本人としての義務が果たせる気がする。





≪高齢化社会のメンタルヘルス≫

 昨年末、ケアストレスカウンセラーの改訂版が本屋さんに並んだ。改訂版には要望の多い高齢者対策や認知症の方の対応も盛り込んだ。切実な高齢化社会である。増刷になるのは皆さんが関心を持ち、より良い解決策を求めているからだ。


 「高齢者虐待」と「児童虐待」の決定的な違いは何かというと、多くの場合「高齢者虐待」は虐待を受けた人に原因があり、後者は虐待をした人に原因があるという。
 介護施設で虐待を受ける高齢者もいらっしゃるが、何が悪かったのかという責任追及は警察に任せて、一番大切な事はどうしたら介護をしている人のモチベーションを安定的に維持させられるかという、介護をしている人のメンタルヘルスを考えるべきだろう。

≪介護している人のメンタルヘルス≫

 決して、虐待をしている人を擁護しているのではないが、そもそも虐めてやろうと思って介護士になる人はいない。自分のギリギリのところまで我慢をして、踏み止まれず結果として虐待のようなことになってしまうというのが本音だから。介護をするということは、言葉で言うほど綺麗ごとでは終わらない。介護士のインタビューで、
「何が一番つらいか」という問いに対して「呼び鈴を鳴らしてすぐに駆けつけないと罵詈雑言は当たり前、時には叩くなどの行為もある。しかし、慢性的な人手不足の中、他者のおむつを替えている途中では駆けつけられない、どうしようもない事情を説明しても全く考慮されない。そして、自分は罵倒されながら汚物の処理をする。」
 毎日、こんな過酷な状況に追い込まれ続けたら、人は天使で居続けられるのだろうか、心に悪魔が宿るのも解らない訳ではない。だから、老人はもっと老獪になるべきだ。文句をいう替りに狸寝入りでもしていたら、介護する人はどれだけホッとするだろう。
 高齢者はこれぐらいの知恵を経験から身につけているはずなのに、発揮できない現実がある。
介護する人、介護される人、お互いのメンタルヘルスを理解できれば、心が通じるだろうし、感謝の気持ちも芽生え、その感謝の気持ちさえあれば介護をする人も頑張れるのだ。
 そのツールがケアストレスカウンセラーである。
 立ち読みでも良いから(本屋さん、すみません!!)、手に取って自分に必要なパートだけでも読んでほしい。

 これからの日本は介護問題なくして語れなくなってきた。介護する人のメンタルケアが「ケアストレスカウンセラー公式テキスト」ならば「介護される人の心得」なる本がきっと必要になるだろう。
ただ今、コンテンツをまとめているので乞うご期待である。

チーム絆代表  渡辺 照子